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神宮外苑24時間 チャレンジ ④

~走る。 パーソナルトレーナー の戯言。~

目標。すり替わる。

13時間から22時間までの周回と距離はこうだ。

  • 13時間 6周(121.900km 6’24”/km)
  • 14時間 7周(131.175km 6’24”/km)
  • 15時間 4周(136.475km 6’36”/km)
  • 16時間 7周(145.750km 6’36”/km)
  • 17時間 6周(153.700km 6’38”/km)
  • 18時間 5周(160.325km 6’44”/km)
  • 19時間 6周(168.275km 6’46”/km)
  • 20時間 7周(177.550km 6’45”/km)
  • 21時間 6周(185.500km 6’48”/km)
  • 22時間 6周(193.345km 6’50”/km)

14時間が過ぎた頃に襲ってきた猛烈な睡魔もなんとか振りほどき、再び6~7周のラップを刻めるようになるまで復活していた。ここから距離も時間も何もかもすべてが未知の領域だ。今私が体験していること、それはすべてが発見で、すべてが財産だ。初めて訪れる土地を散策するように何度も周回を重ねたこの道を走るのだ。

22時間経過したところで193kmに達した。言い忘れたが、周回の測定方法はというと、コース上(エイドステーション前)に敷かれた計測マットの上を選手が通過することで周回数がカウントされる仕組みになっている。選手は足首に計測チップを付けて出走する。また計測マットからエイドステーションまでの動線は一方通行になっており、機器の誤作動や不正を防止している。計測マットを通過した十数メートルほど先にモニターが設置されていて、そこにリアルタイムで周回数や距離などが表示される。選手はそれを見て自分の記録を確認するのである。

ちなみに通過してからモニターに表示されるまで結構なタイムラグがあり、走行ペースが速すぎると表示される前に通過している。なんてことがある。私のペースでも表示より先に通過の方が早いなんて事があったから、トップ選手は全然確認できてないんじゃないかなと思う。まあ彼等の大半にはハンドラーが付いているから、問題ないんだろうけど。

とにかく私は、目標としていた200kmというラインが、まだ終了まで2時間を残しているという段階で早々に現れたことに驚き、スパルタスロンへの道がついに現実味を帯びてきたことを確信したのである。

こんなとき、ウルトラランナーたるもの、このまま行けるところまで行ったろか。とか、210kmを目指しちゃる。とか、上方に目標を修正するのが当然の考えであろう。しかし、何を思ったか当時の私は(おそらく今も)目標の現状維持を選択。このままなら休憩しながらでも200kmは行くだろう。という考えに至り、歩き出したのだった。

まあ、もともと200km走れるかどうかの確認だし。とりあえずOKでしょ。などとぬかし、24時間走り続けるという本来あるべき競技の本質から離れ、自分に都合の良い、目の前の手軽な目標にすり替えたのだ。

ずっと最初の方に ”ズバリ24時間走の走り方が分からないからである。大の苦手、戦下手なのだ” なんてことを書いたと思うが、24時間走というのはそのペースが速ければ速いほど、長い距離を走らなければならなくて、それはまあ当然なんだけど、走っていようが寝ていようが、みんな平等に24時間後にゴールがやってくるし、そういう感覚も未だにつかめなくて、なんか自分でゴールを決められないもどかしさが常にどっかにあって、自分のさじ加減ひとつで24時間の濃度を濃くも薄くも出来るし、走力以外の別のなにかをすごい試されてる気がしてならないのだ。ただ普段通り黙々と走っていればいいだけのことなのに、不埒な感情が次々と芽生えてきちゃうのである。そうやってつらつら考えると、やっぱり24時間走の走り方がわからない。苦手。戦下手。という結果に至り、よくわからない無限ループをここ数年ずっとグルグルしており、解消の糸口は未だに見つからないのだ。

そのループにはまるきっかけとなった記念すべき出来事が、まさにこの目標のすり替えに他ならないのだ。そして、翌年、さらにその翌年と同じように目標のすり替えを行ってしまった。仮に目標のすり替えが、今後を見据えた最善の策としての判断なら仕方ないのだが、私は現状から逃避するための特急券として行使している事を自負しているので、救いようがないのである。

残り2時間を切ると、疲れ果てて休んでいた多くのランナーが再びコースへ復帰しはじめる。少しでも距離を伸ばそうともがいているのだ。長い間止まっていた体は硬くなり、蓄積された疲労も相まって余計に足が進まない。それでも前へ踏み出そうとする姿勢に沿道のギャリーの声も熱を帯びてくる。

そんな中、私はテントに戻り、腰を据えて休息をとっていた。頭の中で、あと5周ほど。ここから全部歩いても200kmは達成する。などと考えていた。⑤へつづく ③へ戻る